
フレグランズトークvol.9 西田二郎(後編)『人生にA面B面があるなら、永遠のA面でワクワクしたい』
『人生にA面B面があるなら、永遠のA面でワクワクしたい』

会社員でありながらさまざまな活動をし続け、2019年3月には主婦の友社から『バカともつき合って』をマキタスポーツさんと共著で上梓。11月20日にはクラウンレコードから歌手名義Njとして「ロコの星」でデビューするというパラレルクリエイター、西田二郎さん。後編では「人生にはA面B面がある」という鋭い分析を聞かせてくださいました。西田ワールドの後編、お楽しみください。
――前回、男性用フレグランスは主張が強く「オレや!」とぐいぐい来るような感じで、女性用は「こんにちは〜」と挨拶してくる感じとおっしゃってましたが、男性はかつて好きだった女性が付けていた香水をかいで彼女を思い出すというようなことはありますか? 女性は結構ありますが。
少なくとも僕はないですね。だってね、女性って、自分が好きなものを付けてるんですよ。前回お話したように、男性は欠けてるピースをフレグランスで埋める。女性は存在が完成されていて、自分が好きなフレグランスをアピールの手段としてつける。女性がフレグランスつけるのは自分のため違いますよね。言うたら自分って言うものの存在を周囲にアピールするため。それはなんでかっていうと、究極、男性へのアピールですよね。
それはもう、ずーっと喋ってるようなもん。「いかがですか? 私」って。しかも、それを僕だけじゃなくて、電車で隣り合わせたおっさんにまで「いかがですか?」って言うてるわけやもん。ええ加減にしてほしいわ! ってなりますよ(笑)。だから僕は香水つけてる女性、避けてたかもしれません。

――となると、相手をひきつけたくて付けている香りが、逆効果になってる可能性もありますね。
効果がないと思うと、さらに足したり、変えてみたりするでしょ? それでずーっと(香りが)しゃべってるようなもんだから僕は苦手です。唯一、女性の香りでいいなと思うのは石けんの香りかな。石けんの香りはね、産湯感があるんですよ。
――産湯感??
そう。生まれたてというか、母なるものに戻る一歩手前というか。石けんというのは香りの中にセクシャルな感じがない。きれいに清潔にしようねっていうイメージだから「この香りが好き」と言っても言い訳ができるような……。
――女性は男性のためにと思って好きな香りをまとっても、逆効果になる可能性が高いと。男性は「オレや!」の香りが多い。そうなるとモテる香りってあるんでしょうか?
なんかね、モテを意識してつけるっていうのも違う気がするんですよ。僕の言ってる「オレや!」っていう男性用フレグランスは、香りがその人に成り代わって「オレやぞ!」という男性感をバーっと出しますから、そこに女性が振り向くって理屈は理解できなくはない。でも、僕はイヤですね、そんなん付けたくないですよ。そんな力借りてまでモテたくない。
まあでも、これはあくまで僕の話。一般論とは別ですよ。「何ゆうてんねん、好きになってもろたほうが勝ちやないか!」という方もおられるでしょうから、そういうマーケットも存在するんですしね。

――いつも「モテ」を意識しているホストの方なんかは、そうなのでしょうか?
いや、違うと思いますよ。ホストの方は自分が好きな香りを付けない。香りで欠けている部分を埋めてしまったら、相手を満足させてしまうでしょう?ホストの方は、自分の魅力にハマってもらって、次もまた会いたくなるスパイラルをどう作るかが大切だから、今日だけ楽しんでもらうんではなく、今日の喜びが明日につながるように、その渇望感を与えないとダメなわけですよね。
「なにかが足りない、その欠けているものを私が埋める!」と女性が言うて、シャンパンがパーン! と開くんじゃないか?「何かが欠けている」というところが重要で、だからこれは誰かに聞いて確かめたわけじゃないですが、常連さんは「これで欠けている部分を埋めて!」と、1回は香水をプレゼントしているんじゃないですかね。
――すごく腑に落ちますね。 でも、一般男性はやっぱり欠けている部分を好きな香りで埋めたくて「オレや!」に頼ってしまう。
でも「オレや!」の香水に頼ってしまうと、結局自分を隠すためのツールになってしまいませんか? 自分ていうものをさらけ出すために香りを使うような、社会に出て凛とするために使うのがええんちゃうかなと思うんです。
モテるために香りを使うって料簡がすでに違う気がする。モテないから香りを足すんじゃなくて、香りと自分の存在を融合させてこその「オレや」になっていくこと。自由に生きている「あなた」の中にある人間としての尊厳を香りで表現できるのなら、それは素晴らしいことだと思う!それでも好きになってくれないような子だったら、そんな人を好きになった思ったお前が間違うてるやろ! っていう話。好きにならなければならない子は別にいるはずですよ!

――全男性にお聞きいただきたい言葉ですね。では、エチケットとしての香りはどうでしょう? 大事な商談に、汗臭いまま行けませんよね。そういうときの男性の香りは?
それはね、自分自身の香りというより、空間の香りはあったほうが良いと思います。人のところへ行くときはともかく、先方がこちらに来るんだったら「戦う気はないよ〜」という、リラックスできる香りが空間に充満していたら、お相手さんも話聞いてくださるんちゃうかな。
「一緒にやっていきましょう!」というときには、共闘していくぞ! という香りがあったら空間的には良いかもしれませんね。香りって、そのへんの、関係性をはっきりさせるキラーコンテンツにも使えると思うんですよ。

――ここでいったん、西田さんご自身の話を伺います。『バカともつき合って』出版が3月、本の中に「立ち上げたい」と書いてあったミドルメディア(誰もが知っているポータルサイトと、個人に集約されるSNSの中間のメディア)は本が出てすぐにもう立ち上がっていて、さらに歌手デビューも。とにかくスピードが早いですよね。
なんかね、いろいろやってるんですよ。僕は「オレは●●屋さん」という人がうらやましい。僕は何も決められない。立派な、ちゃんとした人が多い中で、こんなになんにも決められない、「良う分からへん」っていう人間が、それでもこうやって生きてるっていう見本みたいなもんです。ただ、「おっ」っと思ったものを見つけた瞬間にバッと思いっきり寄り添いに行く、そのスピードは早いかもしれない。そうしたらどんどんいろんな事が進んできてる。
ミドルメディアは「アンポータリズム」という名前で、第一線で活躍する人と、知る人は少ないけどおもろいことしている地域の人をつなぐメディアです。それも、すでに動画も記事もバンバン上がってます。小説も出す予定ですし、前からやってた音楽活動も急に話が進んで、クラウンレコードからNjという歌手名義でデビューすることが決まってます(11月20日デビュー曲「ロコの星」)。
だから「お前は何者なんだ」って言われても「そんなん、決められへん!」って感じです。ただ、感じたことに瞬間飛びついて行く。だって、おもしろいですもん、やっぱり。ずっとワクワクしたいです。

――瞬発力の原動力はワクワクですか?
僕はワクワクしたらすぐ寄り添います。ワクワクせえへんかったらしんどいだけやもん。いったい、人生いつまでワクワクさせてもらえんねやろか? って思ってます。ところでね、人生A面B面説って、あるんですよ。
――なんでしょうか、それ?
人生100年ってよく言いますけど、そうすると50で折り返しってことになりますよね。その折返しを意識した人って、そこから先は急に「B面」の生き方しはるんですよ。人によっては、40ぐらいからそうなってる人もおられますね。人生の畳み方、会社やってる方ならその畳み方みたいなのを意識した生き方になる。

――A面は現役バリバリ、B面は引退後っていうニュアンスですかね。油っ気が抜けて、落ち着いちゃうみたいな。
年齢でそういう風に自分を決めてはる人もおられる。でも60歳が定年やったら60からがB面かっていうと、実際はその少し前からB面のフィールドが出てきよると思う。世界が急に変わるんですよ。一般的に世の中が「50も超えたらB面でしょ、もう人生折り返しなんだから」って目で見てくるってことも含めてね。
僕はね、永遠のA面でいきたいんですよ。ワクワクしたいですもん。周囲からは40ぐらいからずっと言われてます。「もうB面やんな、B面なのになにやってんの?」って。自分自身でも、頭の中のどっかで「お前、もうB面ちゃうんか?」って声が聞こえますしね。
僕はほんとアホやから「ずっとA面や!」と思います。そうでなきゃあかんとか強い思いがあるわけやないんですけど、折り返さないんですよ。カセットテープ、昔はオートリバースって勝手にA面からB面に折り返すやつあったじゃないですか。でも、僕は折り返さない。
――まだまだA面が続くんですね。
B面があかんっていうてるわけではないんです。B面の幸せってあると思う。でも、いいA面やってなかったら、いいB面になれへんと思うんです。どうせB面になるんやったらいいB面になりたいじゃないですか? だから僕はA面がんばらなあかんって言うわけですよ。
若い子には早めにB面がいつか来ることを知っといてもらいたい。さらに、もう少しでB面になりそうなアラBの人にも(笑)。でも裏返らないでずっとA面って場合もあるかもしれません。
――A面B面説、みんなに知ってほしいですね。
ははは。「説」とかゆうても、実はさっき思いついてでっち上げたんですけどね。でも、いいでしょ? ともかく僕はまだA面です。これからもワクワクし続けます。
――きっとこの記事が出る頃には、また新しいことを手掛けているかもしれませんね。ありがとうございました。

プロフィール:西田二郎(にしだ・じろう)
讀賣テレビ編成局チーフプロデューサー。「11PM」「EXテレビ」演出を経た後「ダウンタウンDX」を22年間演出。以後、制作会社へ出向し数々の放送局の番組制作に関わる。タレントに頼らないバラエティ「西田二郎の無添加ですよ!」で民放連盟賞優秀賞。2015年より営業企画を経て現職。テレビ局の枠を超えて、リクルーティングやさまざまな未来へメディアの取り組みを模索する「未来のテレビを考える会」の代表幹事を務めている。またクラウンから歌手名義Njとしてメジャーデビュー。
西田二郎公式ホームページ
Twitter:Nj「ロコの星」(西田二郎)@jironishida
アンポータリズム
クラウンレコード Nj
text:Mikiko Arikawa photo:Daisuke Yanagi