フレグランズトーク vol.03 滝田学『フットサルを“観るスポーツ”に昇華させるために ーアスリートと匂いの深い関係』

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「フットサルを“観るスポーツ”に昇華させるために ーアスリートと匂いの深い関係」

日本でフットサルという競技が広く知られるようになる前に、フットサルに出会い、魅せられ、今では日本を代表する選手となった滝田学さん。その活躍はプレーだけにとどまらず、コートの外では自ら団体を立ち上げ、フットサルを“観るスポーツ”として育てる活動も行っています。

フットサル界のトップでプレーし続ける滝田さんのアスリートマインドとは? これまでの競技人生を振り返りながら、2020年のW杯にかける思い、そして「匂い」がメンタルにもたらす効果に迫ります。

□日本のフットサルの発展とともに歩んできた競技人生

ーー幼稚園の頃にサッカーを始めたそうですが、フットサルとはどのように出会ったんですか?

小学4年生の頃、母親が近所にあったフットサルスクールを見つけてきたんです。当時、日本ではフットサルという言葉も知られてなくて、フットサル場もほとんどなかったんですが、東京で初めてできたフットサル場がたまたまうちの近所で。「サッカーがうまくなるために、やってみたら?」という母親のすすめで始めてからは、サッカーとフットサルの両方をやっていました。

ーーサッカーよりフットサルの方がおもしろいと感じたのは、いつ頃だったんですか?

中学生の頃から、サッカーよりフットサルの方が断然好きでした。フットサルはサッカーよりコートが小さく、人数も少ないので、一人ひとりにかかる責任が重いんですが、その分、ボールに触れられる機会は多いので、全員で戦っているという感覚が大きかったんです。

ーー日本のフットサルの創成期に、のちに日本を代表する選手となる滝田さんがフットサルに出会ったことに、何か運命的なものを感じます。

本当にいいタイミングだったなと思います。日本でフットサルという言葉も知られていない頃に、この競技に飛び込んで、その楽しさにハマっていって。他の選手と比べて競技歴も長いですし、本気で頑張れば、サッカーよりも選手としての可能性があるんじゃないか、というのはずっと感じていたんです。実際に、日本フットサルリーグ「Fリーグ」が2007年に開幕したと同時に「ペスカドーラ町田」に入団し、それ以降、プロ選手として競技に専念させてもらっています。

ーー2016年、W杯の出場権をかけた「AFCフットサル選手権2016」に日本代表選手として出場し、準決勝で敗退。その後、2017年5月、試合中に大ケガをされます。

長期で戦線離脱するのは、長い競技生活の中で初めてのことでした。再起を果たすきっかけにしたいアジア選手権が2018年2月にあり、周りからは間に合わないだろうと言われていました。でも、お世話になっているトレーナーだけは「余裕で間に合うよ」と言ってくれた。実際、そのトレーナーのおかげで、10か月かかるといわれていたところを、わずか4か月で復帰できました。リハビリ期間中も、あまりネガティブにならなかったですね。大ケガしたという事実はあっても、日々楽しんでリハビリに取り組んでいました。ただ、ケガって大変なんだなって思いました(笑)。

ーーその前向きな姿勢が、回復を後押ししたような気がします。

そうかもしれませんね。もちろん、トレーナーを始め、たくさんの方々にサポートしてもらえたことは、本当にありがたく思っています。自分の選手人生をかけた2020年のW杯を見据えて、まわりの方々が応援してくれている、その気持ちが本当にうれしかったです。この人たちと一緒に2020年をめざしたい、という思いは芽生えています。

ーー2020年のW杯に向けて、意気込みを聞かせてください。

2007年にFリーグが開幕して以降、選手個人やチーム単位のレベルは上がってはいるものの、観客動員数は右肩下がりで、“観るスポーツ”としては育っていません。そんな状況を打開するためにも、W杯の出場権を勝ち取り、結果を残すことが、フットサル界全体の責務だと思っています。2016年に自分たちがその機会を逃してしまったので、次は自分たちで取り返すしかないんです。本当にやるしかないという思いだけです。

ーーフットサルを“観るスポーツ”として定着させるためにも、2020年のW杯は、日本のフットサル界にとって重要なカギとなりそうです。

お客さんのために、とかそういうカッコつけたことはあんまり考えてなくて。まずは自分たちが楽しまないと、お客さんを満足させることなんて100%無理だと思っています。フットサルはプロスポーツのように見える部分もありますが、実際は野球やサッカーに比べると環境は整備されてなくて、アマチュアスポーツに近い。他の仕事と掛け持ちしながら、やっている選手が多いんです。僕もフットサルが本当に好きで、人生を賭けてやっているからこそ、楽しむことを疎かにしたくないなと思っています。

□アスリートのメンタルケアに「匂い」は欠かせない

ーーフットサルの楽しさを広く伝えるために、滝田さんは自ら「FTW(FUT THE WORLD)」という団体を立ち上げて、実際に行動されています。どんな思いで始めたんですか?

「FTW」は、フットサル界を盛り上げたいという一心で、2014年に立ち上げました。フットサルに、ファッションや食など別の要素を掛け合わせて、新しいつながりをつくっていけたらという思いが大きいですね。おもにイベントを通して、フットサルに興味がない人にも、その楽しさを知ってもらう機会を増やそうと、現役選手としてできる活動を続けています。

ーーそんな活動のかたわら、2009年から現在まで日本代表に選ばれ続けていることは、並大抵のことではないように思います。

たしかに、今の代表メンバーの中では僕が一番代表歴が長くて、代表としての試合出場数も一番多いと思います。このレベルを維持するために大事にしているのは、トレーニング量ですね。睡眠より、食事より、トレーニング量って感じです。基本的にオフはほぼとらないですね。休んでる暇はないんです。W杯でサプライズを起こすためには、そこまでやらないとダメだという気持ちでやっています。

ーーご自身のメンタルをいい状態に保つために、やっていることはありますか?

僕も含め、アスリートは、香水などのフレグランス系が好きですね。僕らは日頃から気を張っていることが多いので、いい匂いでリラックスしたいんだと思います。

ーーフットサルは、室内競技なので臭いがこもりますね。

相手チームの選手との接触も多い。ただ、僕は相手の臭いを気にする前に、自分からいい匂いを発するようにしています。試合前、ユニフォームにミント系のアロマオイルを一滴垂らしておいたり。ミント系は頭がクリアになるので、スッキリとした状態で試合に臨めるんです。相手の臭いは気にしている余裕もないですし、気にしていたら負けますね(笑)。

ーー練習やトレーニングの後など、日頃は臭い対策をしていますか?

男社会なので、練習中の臭いはもはや誰も気にしてないんですが(笑)、なんとなく漂ういい匂いが好きなので、シャワーの後は「フレグランショット」を付けてほのかな匂いを楽しんでいます。「グリーンウッド」の匂いがとくに好きですね。もともと、きつい香りってあまり好きじゃないんですが、これはふわっと自然に匂うので、臭い対策だけでなく、リラックスしたい時にもいいですね。

ーー「フレグランショット」はサイズもコンパクトなので、滝田さんのように遠征などで移動が多い方に重宝しそうですね。

遠征に持って行ってますよ。携帯しやすいので、付けたい時にすぐに付けられて便利ですよね。男ってちょっとした外出は手ぶらのことも多くて、瓶入りの香水をわざわざ持って行かない。なので、このサイズ感はありがたいですね。ちょうど今も、上着のポケットに入ってます(笑)。毎日使ってますよ。

ーーもともと匂い好きとのことですが、それはいつ頃からなんですか?

中学生の頃から香水が好きでしたね。適量がわからない年頃だったので、一回にワンプッシュじゃないんです。部活の練習の後、汗が残った状態でたくさん振りかけて、逆にクサくなったり(笑)。今でも香水の適量がわからなくて、付け過ぎちゃう時もあって。僕、子どもがいるんですけど、香水やアロマオイルを付けてると、必ず「クサイ」って言われます。

ーー最後に、滝田さんの記憶に残る、思い出深い匂いを教えてください。

幼稚園の園庭に大きなキンモクセイの木があったんです。僕はそこでサッカーを始めたので、今でもキンモクセイのやさしい匂いを嗅ぐと、初心を思い出します。僕にとって、競技人生と匂いは、やはり切っても切り離せないですね。

プロフィール:滝田学(たきた・まなぶ)
1986年生まれ。東京都出身。ASVペスカドーラ町田所属(Fリーグ)。2009年より現在に至るまで、フットサル日本代表の中心的存在。2014年以降、フットサル日本代表のキャプテンを務める。フットサル普及のための様々な活動も行う、日本フットサル界を牽引する代表的な選手の一人。

Twitter:@takita_manabu
Instagram:@takita_manabu 

text:Atsumi Nakazato photo:Daisuke Yanagi 

撮影協力:ATHLEA HARAJUKU
https://www.athleta.co.jp/harajuku/