フレグランズトークvol.10 原田龍二 『飾ることをやめたら全裸俳優になった』

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『飾ることをやめたら全裸俳優になった』

端正な顔立ちの元祖イケメン俳優・原田龍二さん。テレビ番組のレポーターとして世界各国の秘境を訪れるうち、心境に変化が現れたそうです。また、ある匂いをかぐと、秘境各地の思い出がよみがえるとか……。俳優、司会者、また「温泉俳優」「ミステリーチェイサー」など不思議な肩書を持つ原田さんの軌跡をたどりました。

――デビューのきっかけは?

1990年に、ジュノン・スーパーボーイ・コンテストで準グランプリを取りました。1992年にドラマで俳優デビュー。歌手デビューもしましたし、映画にも出ました。とにかく右も左も分からない中で、がむしゃらに仕事をしていましたが、芝居の勉強をしていたわけでもないし、不安を感じる毎日でした。
転機になったのが1995年からレポーターをつとめた「世界ウルルン滞在記」など、あまり人が行かない秘境を訪れるような仕事が来たことですね。海外、それも秘境中の秘境へ行き、少数民族と言葉も通じないのにしばらく過ごす。自然も人も、日本では出会えないことばかりで、ここで自分が感じたことがその後の仕事にも影響していきましたね。

――印象深かった場所や人は?

大草原が広がるモンゴルには、3回行きました。南米のジャングル、東南アジアの奥地……。ラオスやスリランカにも行きましたね。今でも思い出すのは、タイの少数民族、ピートンルアン(ムラブリ族)との出会いでしょうか。幻の部族と言われていて、ジャングルのどこにいるか分からない、会おうと思ってもなかなか会えない。ところが、現地で彼らと会ったことがあるという人に出会いました。ぜひ会いたいから案内してくれとお願いすると「僕も今彼らがどこにいるか知らない。運が良ければ会える。それでもいいか?」「もちろん!」。
そこで彼についてひたすらジャングルを歩いてピートンルアンの人々を探しました。そうしたら運良く、巡り合うことができたんです。でも、彼らはとても警戒心が強くて僕とは目も合わせてくれない。言葉が通じなくても、顔を見合わせればなんとか意思の疎通が取れるけど、それもできない。
おみやげに野ブタを持っていったんです。それは受け取ってもらえました。彼らは早速豚をつぶして料理をはじめました。解体した豚を竹筒のようなものに入れて、蒸し料理にするんです。でも、僕にはくれなかったんですよね。なんとか、話がしたい。そこで、いろんなこだわりを捨てました。どうしたかというと、彼らはフンドシいっちょうなんです。だから僕も、服を脱いでふんどしだけになって彼らの中に入っていったんです。驚いたことにその途端、彼らの態度が和らいだんです。

――よくそこでふんどし姿になれましたね! テレビカメラも回っているでしょうに。

彼らを見ているうちに、いろいろなこだわりや羞恥心を持っている方がカッコ悪い! と思えてきたんです。そうしたら、今までこだわっていたいろんなことがバカバカしくなってきました。彼らに限らず、秘境に暮らす人たちと交流するうちに、飾ることがだんだん苦手になってきたんですよ。30代ぐらいから飾ることより飾らない美学みたいな方へ意識が行きました。他人は(僕を)飾ってくれるので、だったらもう自分から飾る必要ないかなぁと思って。どうせイメージとか、勝手についてきますからね。
あ、ちなみに豚料理ですが、なぜくれなかったか後で聞いたら、仲間はずれにしたんじゃなくて、僕が「欲しい」と言わなかったからなんですって。文化の違いですね。

――飾らないでいいんだという気持ちが、仕事にもいい影響をもたらしたんでしょうか。そういえば、近年「温泉俳優」としても有名な原田さんですが、温泉に入るときは撮影でも一糸まとわないそうですね。

はいそうです。脱いだらカッコつける必要もないじゃないですか。脱いでるのに一部だけ隠すなんて、そのほうがカッコ悪いですよ。そういう思い切りも、秘境の地での経験が活きていることは間違いないですね。

――他にも印象深い場所はありますか?

どこも思い出深いですね。日本とは異質な風景に身を置いていると、とてつもない異文化に感電したようになってくるんです。そして、その心の状態のまま、日本で生きていたいという気持ちになる。場所の波長と、僕の感受性が合うんでしょう。だから日本に帰ってくると、まだ体が感電してる状態で、雑踏の音がうるさくてたまらない。看板やポスター、標識などの文字が情報の渦になって押し寄せてくるような気がしましたね。

――ご自宅も、都心ではなく自然を求めて埼玉に建てられたとか。

はい。できるだけ自然がある場所に行きたかったんです。仕事で秘境のような山深いところへ行ったり、ジャングルを歩いたりすると「ここがもし、故郷だったら……」と、自分をそこに投影してしまいますね。住んでいる方は「不便なところさ、何もない」なんておっしゃいますけど、ぼくが求めているものってそういう世界かもしれない。日本はあまりに便利すぎて、なんでもたやすくできてしまうけど、それが何かを失わせているように思えます。不便であることが、心を温かくする1つの術かなって。僕はそっちの方が好きなんですね。

――芸能界の方の原田さん評は「素のまま」「カメラが回っていてもいなくても同じで裏表がない」などというものが多いようですが、それも秘境へ行ったことがきっかけだったかもしれないですね。ところで、最近ではUMAなど不思議なものの案内人としても知られていますね。

はい、「ミステリーチェイサー」としてテレビでも座敷わらしを探したりしてますし、2019年7月に『ミステリーチェイサー 原田龍二の謎のいきものUMA大図鑑』(宝島社)という本も出しました。こういうものたちって、いないだろうなと思っても100%いないとは言い切れない、そこが好きなんですよね。
先日「ネス湖のネッシーはオオウナギだった」というニュースが出てましたけど、科学的に「いない」ことが立証されたとしても、絶対いないとは誰も言い切れないと思うんです。どこかに「いる」「いてほしい」と人が思うこと、科学では解明できない謎、そういうものにロマンを感じるんです。
座敷わらしを訪ねてあちこちへ行ったときは、おもちゃが僕の方へ動いてきたり、衣紋掛けにかけてあるたくさんの着物の1枚だけが激しく動いたりといった経験をしました。座敷わらしそのものの姿は見ていないんですが、これはもう、いるとしか思えない。とはいえ、本音のところではいてもいなくてもどちらでも良いと思っています。あんまり「絶対にいる!」と思い込まず、一歩引いてみることも必要かなと。なんだけれども、どこかにいるのではないか? と思うほうがロマンがありますよ。 

――たとえば、秘境の思い出が特定の匂いで思い出されることはありますか?

ありますね。そういう場所に共通している匂いがあるんです。それは物を燃やすにおいです。火を使うときってだいたい料理するときです。収穫したものを焼いたり煮たりするためにまず、木を燃やして火をおこして調理します。木と木が擦れあって燃えている匂い……。一緒にその場に数日いると、僕の体にもしみつきます。帰国してもしばらくなにかに付いているのか、ふっと匂う時がある。そんなときや、あるいは、日本で焚き火の匂いを嗅いだりすると、ジャングルや草原の記憶がよみがえってきます。普段は自分の中に深く沈殿している思い出が、匂いによって引き出されれてくるような感じです。匂いと記憶って直結していますよね。僕はすごく匂いに敏感です。

――人にも匂いがありますよね。インドに行ったとき、すれ違う人からクミンの匂いがすると感じました。秘境の人たちから感じる匂いはありましたか?

そうですね……。モンゴルでは体臭って感じなかったですね。風土が乾燥しているからか、みんな汗をかかない。たくさん着込んでいても汗かかないんです。現地の方はお風呂に入らなかったですし、僕も滞在中は入りませんでしたが、ぜんぜん大丈夫。羊肉をよく食べていても、肉っぽい匂いはまったくしませんでした。一方、熱帯雨林で暮らしている方たちは、湿度・気温の高い中で暮らし、汗をかくことで体調を整えているから、汗の匂いがしました。当然、自分もそうなります。

――東京では、お仕事柄、汗まみれというわけにはいかないですよね。

今日ね、いただいたこれ(フレグランショット)つけてみましたよ。これ、ベタベタしないし、つけてるかどうか分からないぐらいの香りでいいですよね。 

――ありがとうございます。今日つけていらっしゃるのはどれでしょうか。

ええと、グリーンウッドです。1回つけて、重ねてつけてもいいし、すごく使いやすいですね。あんまりほかにない香りだし、とにかくベタつかないのがいい。それとスティック型で携帯しやすいし、肌につける行為がカッコ悪くない。「あ、匂い消してるな」と思われないですからね。フレグランスでこういうものが誕生するとは思いませんでした。おしゃれってさり気ないほうがいいと思うんですけど、「フレグランショット」は香りも形状もさりげなくていいですね。 

――最後に、モテ代表のような原田さんに伺いたいんです。「モテたい!」と思っている、世の男性に、匂いも含めてアドバイスするとしたらどんなことがありますか?

そうですね、まず前提として「モテたくない!」っていう男はいないと思うんです。え? 女性もそう? そうか(笑)。世の中に女性がいて、僕ら男性がいる、それがすごく様々なものを生み出したって思うんです。普段家でくつろいでいるときどうでもいいカッコしている人は多いでしょうが、今日だって僕は「撮影がある」って聞いていたからシャツを着てきました。「もうモテとかどうでもいい」っていう人は、何もつけずに着たきりスズメでいいわけですが。
やっぱり、着ているものも、匂いも、相手の目があることを意識するからこそ「ちゃんとしよう」と思うし、それに対応した商品もできる。これ(フレグランショット)だって、そういう気持ちがなければつけないでしょうね。素でいることが大切でも、やっぱり相手を不愉快にさせない気配りは大事だと思います。

――飾ることをやめて「素」でいることを選んだ原田さん。でもその「素」は、人を不愉快にさせないものでなければならない、その気配りこそが原田さんの人気の高さにつながっているのかもしれません。

プロフィール:原田龍二(はらだ・りゅうじ)
1970年生まれ。東京都出身。1990年「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」準グランプリ受賞をきっかけに芸能界へ。92年ドラマ「キライじゃないぜ」でデビュー。「水戸黄門」5代目助さんや「相棒」陣川刑事役などで幅広い年齢層から支持を集める。俳優の傍ら、温泉俳優、全裸俳優として温泉めぐりの番組に出たり写真集を出したりもして注目を集める。さらに「ミステリーチェイサー」としての一面も持ち、UMAに造詣が深い。「世界のなんだコレ?ミステリー」では、数年に渡り座敷わらしを探しに全国を旅した。「5時に夢中!」(TOKYO MX)金曜MC、「DAYS」(ニッポン放送)水曜パーソナリティーを担当。

text:Mikiko Arikawa photo:Katsunori Suzuki