フレグランズトーク vol.02 奈良巧『匂い専門家に聞く 加齢臭と上手につきあう方法』

『匂い専門家に聞く 加齢臭と上手につきあう方法』

大学時代、彼女から「アラミス」という高級せっけんをプレゼントされた奈良巧さん。「これ、使うといいよ」という彼女の言葉に、「これってどういう意味?」と考えたといいます。その後、編集者として働き始めた20代のころ、同僚の指摘で自らの体臭「ワキガ」を初めて自覚。そこから奈良さんの「匂い」に向き合う日々が始まりました。

今回は、著書『におわない人の習慣』の中でも、体臭、加齢臭などについて詳しく書かれている奈良さんに、「男の匂い」のこと、そのケアの仕方やセルフチェックの方法などについて、詳しくお話を伺います。

――まずは、多くの人を悩ませる「体臭」とは、一体どんなものなのか教えていただけますか?

 体臭とは、人それぞれの体の匂いのことです。やっかいなことに、これは、どんなにしっかり取り除いでも、時間がたつと後からまた出てくる。決してゼロにならない。それが体臭ですね。ただこれも基本的にはフェロモン臭なんです。しっかりケアをすることで、個性にもなりうることを忘れないでほしいと思います。

ちなみに僕自身がずっと悩まされてきた「ワキガ」はその体臭のひとつです。僕のワキガは遺伝によるものなので、ずっと昔から匂いがあったはず。でも僕は、大学生になるまでその匂いを気にかけたことがありませんでした。そこに、体臭がケアされず、放置されてしまうメカニズムがあります。

 

――そのメカニズムとは、どういったものなのでしょうか?

人間には、もともと「自分の匂いをゼロリセット」する本能があるんです。これは、外敵から身を守るために、敵の匂いに敏感になるよう備わった能力でしょう。だからこそ、私たちは「自分の匂い」を感じることが少ないのですが、この「匂いのフィードバックができてない状態」が、体臭は放置される原因となっています。

「自分の体臭」に気づくためには、少し離れてみることが大切です。ティッシュペーパーや指で皮脂の多い小鼻の脇などをぬぐい、それを嗅いでみてください。それが自分の体臭です。「くさいかも」と感じた方、「脂っぽい匂いがする」と感じた方は、すぐにケアを始めるといいと思います。

――人を悩ませる体臭には、ワキガのほかにも加齢臭などがあります。このふたつの違いについて教えてください。

ワキガの原因は、脇の下などにあるアポクリン腺という汗腺から出る、たんぱく質や脂質を多く含むべたべたした汗。これが独特の匂いを発生させるわけです。ワキガかどうかは、このアポクリン腺の有無、もしくは多い、少ないといった遺伝的な要因で決まってきます。僕の場合は、遺伝的にこのアポクリン腺が多くあり、ワキガになったというわけですね。

一方で加齢臭は、誰でも生成しうる人間が劣化する匂い、つまり皮脂が酸化する匂いです。若い時は、ただ「汗臭い」だけだったのに、30代以降になると、それが次第に「脂臭い」匂いに変わってきます。汗が古くなった皮脂と混ざり合い、時間の経過によって、酸化し、だんだんと古い脂のような匂いが出てくる。これが「加齢臭」なのです。

 

――加齢臭は、何歳くらいから発生するものなのでしょうか?

ある企業の調査によると、おもに「30代から匂いに変化がある」といっていますね。ちなみに加齢臭については、1999年、「ノネナール」という酸化物質がこの原因であると発表した企業がありました。さらにその後、2014年には、別の企業が「ノネナール」ではなく、「ジアセチル」という有機化合物が原因となる「ミドル脂臭」も存在することを発表しています。つまり、男の匂いは、20代「汗臭さ」→30代から「ミドル脂臭」→40代過ぎから「加齢臭」と変化し、40代〜50代はこの「ミドル脂臭」と「加齢臭」が重なるとても危険な年代だというわけです。

年齢を重ねると、これまで一切、体臭を気にしていなかった人、皮脂量の少ない人でさえ加齢臭は出てくるもの。だからこそ、年を重ねたら、全員、ケアが必要なのです。

―今日からできる匂いケアについて教えてください。

【匂い対策】
1:脂をとる。
2:乾燥ケア、保湿をして、脂の発生を防ぐ

まずは、「きちんと洗うこと」です。これが何より大事。でも、意外と「匂い」で悩んでいる人は、洗い方がいい加減なことが多いものです。ある調査結果によると、「加齢臭の発生源は頭皮&後頭部付近」だそうです。みなさん、頭をどんな風に洗っていますか?「ミドル脂臭」を防ぐためには、「シャンプーをつけて頭皮を2度洗いすること」がおすすめ。ちなみに、私は頭皮洗浄ブラシを使って、頭皮をしっかり2度洗いしています。そして、忘れてはいけないのが洗った後の保湿です。とくに洗顔後、保湿をしておかないと、あっというまに皮脂がたくさん出てきてしまうもの。男の保湿は、脂の発生を抑えるためにも必須だと覚えておいてください。 

――なるほど。匂いケアには、やはり洗浄が大切なんですね。フレグランスにはどんな効果があるのでしょう。

先にも話したとおり、体臭はどんなにきれいに落としても、後からまた出てきます。嫌な臭いを抑えるには、ポリフェノールなど、皮脂の酸化を抑制してくれる成分の入ったスプレーや、ロールオンタイプのデオドラント商品などが有効でしょう。そして、これにプラスアルファの要素としてつけるのがフレグランスです。

フレグランスには、様々な効果があると思いますよ。たとえば、「気分の切り替え」、「身だしなみ」、「気合入れ」など。私の場合は、石油ストーブの匂いを嗅ぐと、仕事がはかどるんですが、これは昔の受験勉強の記憶からでしょうね。当時は石油ストーブを焚いて、必死に勉強していたので、その記憶から集中力が増すんです。このように、「香り」は記憶や印象として、自分にも周囲にも残ります。だからこそ、気をつけて使っていきたいですね。

――フレグランスのつけ方について、コツなどはありますか?

とにかく、つけすぎないことが大切です。周囲の人に「匂いがキツイ」と感じさせてしまうと、それはマイナスですよね。その点では、このリップスティック状の「フレグランショット」は、初心者でもつける量が調整できるので、とてもいいですね。無香料タイプは小鼻の脇など、皮脂分泌が多い場所にぬって、匂いの発生をケアするとよさそう。コンパクトなので、持ち歩いて、外出先などでも、人と会うまえにささっと使いたいですね。

――奈良さんは、匂いと向き合う人生を送ってきた、とおっしゃっていますが、それによって得たものなどはありますか?

人とつきあうときに、いい意味で臆病になりましたね。自分と一緒にいて、心地よいと思ってくれているかな、と気にかけるようになりました。たとえば歯から出血があると、「あれ? 匂い大丈夫かな?」と敏感に反応したり、誰かに迷惑をかけていないか常に気にしています。気にしすぎるのもよくないですが、できるだけ楽しく人と関わっていたいので、そういった客観性を持つことはとてもいいことだと、私は感じています。

 ――今後、男の体臭ケアについて、業界ではどんな動きがありそうですか?

「F′」など男性用の見た目がスタイリッシュな商品が出てくるようになると、女性からのプレゼントとしてデオドラント商品を男性に贈る、ということも多くなってくるかもしれませんね。その際には、ぜひ女性が男性にケアの仕方、使い方を教えてあげてほしいものです。そうすることで、男性もフレグランスの楽しみ方を共有できるようになります。

匂いにまつわる商品をもらうと、男性は、「え? なんか親密な感じ?」とうれしくなるもの。相手との距離を縮めるために、恋人同士や、そうなりたい相手への女性からのプレゼントとしていいですよね。

――最後になりましたが、奈良さんから、匂いが気になってくる世代の男性たちにメッセージをお願いします。

加齢臭は誰にでも発生するものです。しかし、年を重ねてから急に体の洗い方を念入りにしたり、匂いケアの習慣をつけていくのはとても難しい。だからこそ、30代から少しずつ、ケアを手厚くしていくのがベストだと私は思います。私たちが「今まで通りの自分でいたい」と望むなら、年を重ねるたびにケアに手間をかけなくてはならないのです。

自分の匂いに敏感になることは、悪いことではありません。それは「一緒にいる誰かを気遣うこと」につながります。そして、その臆病さを自信に変えてくれるのが、フレグランスです。ぜひ、あなたらしいフレグランスと出会い、あなたならではの魅力的な香りをまとって、日々を楽しくすごしてください。

 

プロフィール:奈良巧(なら・たくみ)
1958年生まれ。秋田県出身。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。50歳で退職後、株式会社奈良巧事務所を設立。週刊誌、月刊誌などで、ライター、編集者、カメラマンとして活動。さまざまな企業に取材をし、最新情報をまとめた『におわない人の習慣 最新版 加齢臭読本』(草思社)が話題に。

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textMiharu Kasai photoDaisuke Yanagi